自分の成功だけを考えているトップは、成長できない

人を育てる近道は、トップ自身が自分を整えること

人を育てるためには、トップやリーダー自身が、自分のあり方を整えることが一番の近道です。

 

まわりにいる人は自分の鏡。

自分のあり方次第で、まわりはいい仲間にも悪い仲間にもなります。

人財育成とは、育成する側のあり方を考えていくものなのです。

 

じつは、わたし自身、昔は自分の成長だけを考えているタイプでした。

人の面倒をみるのも苦手なうえ、人に時間をとられることも、あまり好きではありませんでした。

とくに、学生のときは自分の技術を磨けばいいという競争の世界に身を置いていたので、隣の人がトレーニングをしていなくても、自分さえ上達すれば問題ないという状況でした。

 

「ひとりの力」と「仲間の力」

一度は就職が決まっていたのですが、もともと高校教師だった父が、教え子のカメラマンさんを紹介してくれたことで、大きく進路が変わりました。

その人はカメラの専門学校を出ていなかったので、一流と呼ばれるレベルの仕事を得るまでに大変な苦労をしたそうです。

 

その経験から、

「就職が決まったのはいいことだけれど、入る場所はちゃんと考えたほうがいい」

「無名のマイナスからスタートする必要はない」

というアドバイスをいただきました。

 

その助言をきっかけに、わたしは質の高い勉強をすることを考えはじめ、ロンドンのヴィダル・サスーンという、世界的に有名な美容学校に進み、ハサミを持ったことのない人でも入れるクラスに通うことにしたのです。

ヴィダル・サスーンには、全世界から生徒が集まり、サロンではたくさんのスタッフが働いていました。

ここでわたしは、自分で黙々とスキルを高めていく「ひとりの力」と、周囲と協力し合いながら成長していく「仲間の力」を学ぶことができたのです。

 

もともと、会社の創業者である母が人を雇って働いている環境で育ったので、わたしには「ひとりで働く」という意識がありませんでした。

もしも母がひとりで美容室を経営していたら、おそらくわたしもひとり店長だったでしょう。

 

育成することで、人は一人前になる

ロンドンから日本に帰国して家業の美容室に入社したとき、最初は仲間がまったくできませんでした。

そんなわたしが、先代から最初に任された仕事が、若手のスタッフたちにカットを教えることでした。

いまでは考えられないことですが、閉店後21時からはじめて深夜1時頃まで練習をする日々。

一緒に時間を過ごすことで、距離が縮まり、若い人たちが上達することを喜んでいる姿を見ることが、いつのまにかわたし自身の楽しみにもなっていったのです。

 

この「人を育成する」というチャンスがあって、はじめてわたしは自分のあり方を見直すことになりました。

 

自分の成功だけを考えているうちは、トップも企業も伸びません。

人と関わり、仲間になるところまで関係を築いていく。

トップはこのプロセスを怠ってはいけないのです。