二代目は一からはじめるより、ある意味大変
継承しながらオリジナリティを発揮する難しさ
二代目の方のなかには、親と一緒にやってもうまくいかず、会社を売却する人や、新しい会社をつくったりして、まったく違うことをはじめたりする人もいます。
違う業界の方からも、後継者としての講演依頼やご相談を受けることが多々あるのですが、それだけ悩んでいる二代目の方が多いということですね。
ありがたいことに、弊社はディーラーさんやメーカーさんから、よく「こんなに二代目とすんなりバトンタッチして、成功しているところはない」と言っていただいています。
もちろんわたしにも、葛藤や先代の母との格闘などに悩んだことも多くありました。ただ、親の会社をそのまま引き継ぐことは、わたしにとっては当たり前のことでした。
もしかしたら、母から娘への交代と、父から息子への交代は、少し違うかもしれませんね。
これまでの伝統をうまく継承しながら、オリジナリティを発揮することが、おそらく一番理想的です。でも、そこまで到達することはなかなか難しいものです。
方法が違うだけで、ゴールへの想いは一緒
わたしが、親の会社に入社してから代表になるまでに20年。
その間、一時期は親からの批判もたくさんありましたし、社内での派閥問題も起こりました。
当時、まだわたしは「マネージャー」、母は「先生」と呼ばれていた頃。
母もわたしも
「お店をよくしたい」
「お客さまに喜んでもらいたい」
「働いている人をしあわせにしたい」
という想いとゴールは一緒でした。
ところが、それを実現するための方法がまったく違ったのです。
たとえるなら、目的地に飛行機で行くのか、新幹線で行くのかというくらいまったく違うもの。
先代は完璧主義者で、ゼロからはじめた人なので「ほかの人がいなくても自分がいればなんとかなる」という自負を持っていました。
でも、二代目のわたしはそうではありません。性格も違えば、取り組み方も考え方も違います。
そのため、知らないうちに社内が先生(先代)派と、マネージャー(わたし)派に分かれてしまうことに…。
当時は、幹部の人から面と向かって「先生をいじめないで。大嫌い」と言われたこともあります。
そのときのわたしは、「大嫌い」と言われるほど相手と接点もなく、悪いこともしていませんでした…。そう言っていた人も、いまはわたしの下で一生懸命やってくれています。
スタッフとは何度も話をしました。
「先生もわたしもゴールは一緒。飛行機か新幹線か、乗り物が違うだけで、どちらがいい悪いということはないよ」
「生きてきた時代が違うから価値観が違うだけで、しようとしていることは一緒。だから先生派も、マネージャー派もないよ」
こんな説明を何度もしてきました。
どの会社でも、誰にでも、そういうときはあるものなのです。
その時間をどう過ごすかによって、将来の会社の形が変わっていくでしょう。
まず、いまのお店を大事にする
二代目の方からの相談として「新しいお店を持ちたい」という話も、よく耳にします。でも、新しいお店を出店できるのも、先代が築いてきたもののおかげさまです。
ですから、まずはいまのお店を大切にしましょう。
わたし自身もなかなかできないことですが、もう少し先代と寄り添えないか考えていきたいと思っています。
うまくいってから別会社をつくるのならいいのですが、うまくいかないうちに別会社をつくって外に出てしまうと、それをきっかけに亀裂が入ってしまうこともあるからです。